町の外れの丘の上に、看板もない小さな店があります。知っている人は、その店のことを「星の修理屋さん」と呼びます。
店主のノアさんは、夜になると店の明かりを落として、代わりに屋根の望遠鏡を空へ向けます。光の弱くなった星、欠けてしまった星、疲れて瞬けなくなった星。そういう星たちが、小さな光の石になって、丘の草むらに降りてくるのです。ノアさんはそれを拾い集めて、月光で織った布で磨き、欠けたところには彗星の尾のかけらを詰めて、また空へ帰してあげるのです。
ある秋の夜、少年ユウが両手で何かを包むように持って、店のドアを叩きました。
「あの、ぼくの庭に落ちてたんです。直せますか」
手の中には、豆粒ほどの光の石。けれど、その光は弱々しく、消え入りそうです。
ノアさんは虫眼鏡でじっと見て、それから首を振りました。
「この星はね、壊れているんじゃないんだよ。眠っているんだ」 「眠っている」 「うん。この星はね、長いこと、ある人の上で光っていた。その人が無事に家へ帰るまで、眠らないで見守っていたんだ。役目を終えて、ほっとして、眠っているんだよ」
「じゃあ、どうすればいいの」 「今夜だけ、窓辺に置いてあげなさい。朝になれば、ひとりでに空へ帰るから」
ユウは言われたとおり、窓辺に星を置いて眠りました。夜中にふと目を開けると、星はふわりと浮かび上がって、窓の隙間から夜空へすうっと昇っていきました。瞬く間に小さくなって、やがて、空の星の並びの中に、ひとつ、明るい光が戻りました。
次の日の夜、ユウは丘に登って空を見上げました。星たちは何事もなかったように瞬いていましたが、ユウには、そのうちのひとつが、少しだけ大きく瞬いたように見えました。
「おやすみ。今日もありがとう」
そうつぶやくと、丘の上には、すんだ秋の風が流れていきました。