第12話 虹の染物屋さん

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

染物屋のニジコさんは、雨上がりに虹の光を集める名人です。虹がかかると、彼女はガラスの瓶を持って丘に登り、色の層ごとに光をすくって、七色の染料を作ります。

ある春の日、若い女性が店を訪ねました。来月、海の男と結婚するのだそうです。

「結婚式に、虹で染めたベールを着けたいんです」 「素敵ですね。いちばん鮮やかな虹を探しましょう」

ところが、その月は晴れの日ばかり。式まであと三日になっても、雨は降りませんでした。女性は肩を落としました。

するとニジコさんは、店の奥から古い瓶を持ってきました。ラベルには、二年前の日付と「初デートの帰り道」と書いてあります。

「この虹はね、あなたたちが初めて一緒に見た帰り道の虹なんですよ。大事にとってありました」

結婚式の日、女性のベールは七色に淡く光って揺れました。集まった人々が息を呑みました。

ニジコさんの店では今日も、誰かの思い出の日の虹が、瓶の中で静かに眠っています。