空の高いところに、大きな鯨が泳いでいます。名前はソラ。全長は雲より大きく、背中には小さな草原まであります。ソラの仕事は、渡りの途中で群れからはぐれた鳥を、目的地まで運んであげることです。
ある日、コウノトリの子どもがソラの背に落ちてきました。嵐で群れと離れ、翼を痛めていたのです。
「大丈夫。君の群れのいる湿原まで、連れて行ってあげる」 ソラはゆっくりと、雲をかき分けて進みました。道中、子どもはソラの背の草原で眠り、星の海原を見て目を輝かせました。 「おじさん鯨は、どうしてこんなことしてるの」 「昔、私もはぐれたことがあってね。そのとき、知らない鳥の群れが道を教えてくれたんだ。優しさは、回すものなんだよ」
湿原が見えてきました。子どもの両親が、大きく翼を広げて迎えます。別れ際、子どもは自分の小さな白い羽を一枚、ソラの背に置きました。
ソラの背の草原には、そうして集まった羽が何十枚も、大切に置いてあるのです。