第17話 影絵の劇場

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

古い劇場で、毎週金曜の夜に影絵の公演があります。劇場主のカゲロウさんが操る影絵は少し変わっていて、演じるのは「人々が忘れてしまった物語」です。観客の影が舞台に映ると、その人の忘れていた思い出が、物語になって動き出すのです。

ある夜、八十歳のおじいさんが孫に連れられて来ました。舞台に映ったおじいさんの影は、みるみる若くなって、少年になりました。少年は禁じられた裏山に登り、朝日を見ようとしています。転んで、泣いて、それでも登りきって、山頂で黄金色の朝日を浴びました。

おじいさんは目を細めました。 「そうじゃ……そうじゃった。わしは昔、やると決めたらやる子どもじゃった」

帰り道、おじいさんは孫に言いました。 「今度の休みに、裏山へ連れて行ってくれんか。もう一度、朝日が見たいのじゃ」

金曜の夜、劇場の明かりがつきます。忘れていた物語が、また誰かの背中を押すために。