第19話 夢風船の夜店

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

夏祭りの外れの暗がりに、一軒だけ変わった夜店があります。売っているのは夢風船。中身の夢が見える風船で、寝る前に枕元で割ると、その夢を見られるのです。「空を飛ぶ夢」「海を泳ぐ夢」「昔の自分に会う夢」。

少年タクは、入院している妹ユイのために「空を飛ぶ夢」の風船を買いました。手術を控えたユイは、最近あまり笑わなくなっていたのです。

その晩、ユイは夢の中で空を飛びました。町の上、海の上、雲の切れ間。隣にはタクも飛んでいて、二人は笑いながら夜明けまで飛びました。

翌日、見舞いに行くと、ユイが久しぶりの笑顔で言いました。 「お兄ちゃん、昨夜、夢で空を飛んだよ。お兄ちゃんも一緒だった」 「よかった。手術、がんばれるか」 「うん。飛べたんだから、大丈夫な気がする」

帰り際、夜店のおじいさんがタクを呼び止めて、小さな風船をくれました。 「兄ちゃん用だ。中身は『勇気の夢』。心配で眠れない夜に使いな」

タクは風船を大事にポケットに入れて、夜道を帰りました。