第21話 ほたるの灯台

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

船の通う岬に、灯台のない場所がありました。代わりに毎晩、何千という蛍が集まって光り、暗い海の道しるべになっていたのです。蛍たちを取りまとめているのは、暗いのが苦手な少年ヒカルでした。

「なんで暗いのが苦手な君が、夜の仕事をしてるの」 蛍の長老が尋ねたことがあります。 「苦手だからこそ……灯りの大事さが分かるんです」

ある夜、嵐の前触れの強風で、蛍たちが散り散りに吹き飛ばされました。このままでは今夜、船が道を見失います。

ヒカルは震える手で自分の小さなランタンを灯し、岬に立って声を張り上げました。 「こっちだよ! 光のある方へ、集まって!」 一匹、二匹、蛍たちがランタンの周りに戻ってきました。やがて岬は、嵐の前とは思えないほど明るく光りました。沖の船はその光を見て、進路を正しました。

夜が明ける頃、ヒカルは思いました。暗闇は、光の集まる場所なのだと。怖かった暗闇が、少しだけ好きになりました。