ミオの家の引き出しには、小さなオルゴールがしまってあります。雪の結晶の形をした、銀色のオルゴール。亡くなったおばあちゃんからの贈り物です。
このオルゴール、少し不思議でした。ねじを巻いても、普段は鳴りません。鳴るのは、雪の降る日だけ。
初雪の朝、窓の外が白くなると、引き出しの中から、かすかに音がしました。チリンチリンと、優しい調べ。おばあちゃんが好きだった子守歌です。
ミオがおばあちゃんに尋ねたことがあります。 「どうして雪の日だけ鳴るの」 おばあちゃんは笑って言いました。 「雪の日はね、世界が静かになるでしょう。静かな日には、天国からの音も聞こえるのさ。このオルゴールは、あんたが寂しいときに、私がそばにいるって伝えるためのものだよ」
おばあちゃんがいなくなって初めての冬。雪の朝、オルゴールはやっぱり鳴りました。ミオは目を閉じて聞きました。子守歌の向こうに、おばあちゃんの声が重なって聞こえる気がしました。
「……そばに、いるんだね」
雪は静かに降り続け、オルゴールの音は、部屋いっぱいに優しく広がりました。