第24話 紙舟の川

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

村はずれの小川では、夏の初めに「紙舟流し」の行事があります。子どもたちが紙の舟に心配事を書いて流すと、川下の「舟守のおじいさん」が拾って、焚いて天に返してくれるという言い伝えです。

今年、一年生のサクラは舟に書きました。「おかあさんが びょうきで にゅういんしています。はやく よくなりますように」。

舟守の老人タロベエさんは、流れてきた舟を一つ一つ拾い上げます。サクラの舟を見たタロベエさんは、目を細めました。そして翌日から、退院したお母さんのためにと、村の畑の野菜を届け始めたのです。「川向こうの知り合いに頼まれた」と言って。

お母さんが退院した日、サクラは小川へ行きました。 「おじいさん、願いが届いたよ!」 タロベエさんは笑って頷きました。 「川はね、願いを運ぶのが仕事なんだ。人から人へ、バトンみたいにね」

その夏、サクラの笑い声が、川辺に戻ってきました。