帽子屋のシルクさんの店では、気持ちの入った帽子を売っています。「勇気の帽子」「落ち着きの帽子」「笑顔の帽子」。かぶると、その気持ちが少しだけ借りられるのです。
人前で話すのが苦手な青年のトシヤは、発表会の前に「勇気の帽子」を買いました。赤い小さな帽子です。かぶって発表に臨むと、不思議と声が震えませんでした。発表は大成功。
翌日、トシヤは帽子を返しに来ました。 「ありがとうございました。でも気づいたんです。昨日の成功は、帽子より、練習した自分の成果だって。帽子は、最初の一歩を押してくれただけでした」 シルクさんは満足そうに頷きました。 「その通り。私の帽子はね、もともと誰の心にもある気持ちを、表に引っ張り出すだけなんですよ」
トシヤは帽子なしで、次の発表にも臨みました。少し震えましたが、最後まで話せました。