第32話 空の傘屋さん

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

傘屋の店主、ソラヤさんが作る傘を開くと、内側に「必要な空」が広がります。故郷の空、晴れた日の空、星空。雨の日でも、その傘の下だけは、好きな空の下にいられるのです。

海外に引っ越した友人へ贈りたいと、女性が注文に来ました。 「彼女、故郷の夕焼けが大好きだったんです」 ソラヤさんは頷いて、夕焼け色の布を取り出しました。 「空はね、誰の心にも一つ、故郷の空がしまってあるんです。傘は、それを開く鍵ですよ」

数か月後、女性のもとに手紙が届きました。海外の友人からです。「雨の日の帰り道、傘を開いたら、故郷の夕焼けでした。泣いて、それから元気になりました」。

傘屋の店先には、今日も色とりどりの傘が並んでいます。どれも、誰かの空を待っています。