第35話 冬だけの本屋さん

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

雪の降る季節だけ、森の入口に本屋が現れます。店主は大きな熊のボンさん。本当は冬眠の季節ですが、ボンさんは本が好きすぎて、起きて店を開けてしまうのです。

ボンさんの店の本は、貸し出し専門。「冬の間に読んで、春に返してくれればいい」。薪ストーブのそばには、読みかけの本と、眠そうなお客さん。

村の少年タケルは、毎冬ボンさんの店で本を借ります。今年借りたのは、冒険の本。 「ボンさん、どうして貸すだけなの。売れば儲かるのに」 ボンさんは大きな手でページをめくりました。 「本はな、誰かの冬を温めて、また次の誰かの冬へ旅するのが仕事だ。私の店は、その駅みたいなものさ」

春、雪解けとともに店は姿を消します。返された本は、また来年の冬、誰かの夜を温めるのです。