第37話 きつねの帰り灯

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

山里の村では、夕方になると、子ぎつねのコンが山道の入口に座っています。コンは、遅くまで遊んで帰り道が暗くなった子どものために、しっぽの先に小さな灯りをともして、村の入口まで先導するのです。

「コン、ありがとう」 「どういたしまして。暗い道は、誰かと一緒だと怖くないでしょう」

ある雪の日、コン自身が山で足を痛めてしまいました。動けないコンの周りで、日が暮れていきます。そのとき、山道の下から、小さな灯りが幾つも登ってきました。村の子どもたちです。提灯を持って、コンを探しに来たのです。

「コンの灯りがなかったら、私たち、夜道は歩けないもん」 子どもたちはコンをそっと抱き上げて、順番に提灯で足元を照らしながら山を下りました。

その日から、村の人々はコンを「帰り灯さん」と呼ぶようになりました。優しさは、灯りのように、ともし合うものなのです。