第39話 夜歩く靴

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

靴職人の息子、アルトには悩みがありました。朝起きると、自分の靴が少し湿って、土がついているのです。まるで、夜の間にどこかへ歩いて行ったように。

ある晩、アルトは眠らないで見張りました。真夜中、靴はそっと動き出し、玄関を出て歩き始めました。アルトは後をつけました。靴は町を抜け、丘を登り、星の見える草原で止まりました。そこでは、町中の靴たちが集まって、輪になって踊っていたのです。働く靴、走る靴、踊る靴。持ち主のために毎日働く靴たちの、夜の休日でした。

アルトは笑って、そのまま帰りました。翌朝、靴を丁寧に磨いてやりました。 「いつもありがとう。夜は、好きなところへ行っておいで」

その晩から、靴には朝、小さな花が一輪挟まっていることが増えたそうです。草原からの、お土産でした。