第50話 畑の夜の音楽会

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

農家のタマさんは、夜の畑で不思議な音を聞きました。カボチャの葉が風に揺れる音、大根の並ぶリズム、トマトの実の弾むような響き。畑の野菜たちは、夜に小さな音楽会を開いていたのです。

料理人の娘、サキが実家に帰ってきた晩のこと。サキは料理の仕事に疲れて、実家で休んでいました。夜、畑から音楽が聞こえました。 「これは……野菜たちの歌」 サキは畑に座って、目を閉じました。土の匂い、水の音、育つものの気配。料理人になった頃の、野菜への感謝の気持ちが蘇りました。 「そうだ、私はこの音のために、料理をしてきたんだ」

帰京したサキの料理は、少し変わりました。野菜の声を聞くように、下ごしらえが丁寧になったのです。店の常連は言いました。「なんだか、畑の味がするね」。