山の湖には言い伝えがあります。凪の満月の夜、水面を覗くと、湖の底に小さな村の明かりが見えるというのです。
漁師の少年、カイリは満月の夜、そっと桟橋に座りました。湖は鏡のようでした。本当に、底の方に明かりが見えました。そして、水面から小さな女の子が顔を出しました。湖の村の子、ミズハです。 「地上の子と話すのは初めて。あなたたちの村では、空に星が浮かぶの」 「うん。そっちの村は、どんなところ」 「静かで、ゆらゆらしてて、水草のカーテンがあるの」
二人は約束しました。満月の夜に、水面で会うこと。カイリは陸の花を、ミズハは湖の綺麗な石を、交換しました。
季節が巡っても、満月の夜の桟橋では、二つの世界の子どもたちが、静かに語り合っているそうです。