第54話 恥ずかしがりの竜

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

山の洞窟に住む竜のエンは、村人から恐れられていました。近づくと火を噴くからです。でも本当は、エンは恥ずかしがり屋で、人に声をかけられると緊張して、くしゃみのように火が出てしまうだけでした。

村の少女、ヒノは気づきました。エンが火を噴くのは、いつも「こんにちは」と言われた直後だということに。 「エン、もしかして恥ずかしいの」 エンは大きな体を縮めて頷きました。地面に文字を書きます。「こわがらせたくない。ともだちがほしい」 「じゃあ、練習しよう。まずは私で」

ヒノは毎日通って、挨拶の練習をしました。少しずつ、エンの火は小さくなり、やがて、笑うときに小さな煙の輪が出るだけになりました。

村の人々も事情を知り、今では祭りの日、エンは子どもたちに煙の輪を作って見せる、人気者です。