第60話 百年の種

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

小学校の校庭の隅で、土の中から古い種が見つかりました。科学の先生が調べると、それは百年以上前の蓮の種でした。百年の間、土の中で眠っていた種です。

子どもたちは、その種を学校の池の鉢に蒔きました。水をやり、毎朝様子を見ました。数週間後、小さな芽が出ました。教室は大騒ぎです。 「百年眠ってたのに、芽が出た」 「種はね、諦めていなかったんだよ」と先生は言いました。「百年、自分の季節を待っていたんだ」

夏、蓮は大輪の花を咲かせました。薄桃色の、見事な花でした。子どもたちは花を見上げて思いました。待つことにも、意味があるのだと。焦らなくても、季節は来るのだと。

その花から採れた新しい種は、学校の宝物になりました。次の百年へ、手渡すために。