第62話 病院の屋上庭園

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

総合病院の屋上には、小さな庭園があります。管理しているのは、長期入院中の画家、ロクさん。ロクさんは退院する患者のために、花の苗を育てていました。「退院の記念に、一つ持って帰ってください」。

少女マナは三か月入院していました。退院の日、ロクさんは小さな鉢を渡しました。朝顔の苗です。 「この朝顔はね、毎朝、咲いたかどうか気になる。それが、元気になる力になるんだよ」 「ロクさんは、いつ退院するの」 「私はもう少しここで、庭の仕事があるからね」

夏休み、マナの家では朝顔が見事に咲きました。マナは花の写真を撮って、病院へ送りました。ロクさんは写真を見て微笑み、屋上の新しい苗に水をやりました。庭は、退院した人々のその後と一緒に、育ち続けています。