第63話 夜に咲く花屋さん

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

花屋のヒバリさんの店には、夜にだけ咲く花があります。月下美人のように、一晩だけ咲いて、励ましが必要な人のもとへ届けられる花。「夜咲き便」と呼ばれる、ヒバリさんだけの配達です。

失恋で落ち込む女性のもとに、ある夜、白い花が届きました。手紙には「今夜だけ咲く花です。あなたの涙も、今夜だけのものです。明日の朝には、きっと乾いています」とありました。女性は花を枕元に置きました。花は夜明けに静かに閉じましたが、彼女の気持ちも、不思議と落ち着いていました。

翌日、女性は店に寄りました。 「ありがとうございました。あの花、儚いのに、強いんですね」 ヒバリさんは言いました。「一晩だけ咲く花は、咲くことに全力なんです。長さじゃないのよ」

花屋の店先では、今夜も誰かのための花が、蕾を膨らませています。