朝の町に、豆腐屋さんのラッパが鳴ります。「プープー」。豆腐屋のテツさんは、四十年このラッパで朝を知らせてきました。子どもたちはラッパの音で起き、お年寄りはその音に合わせて門を開けます。
テツさんが入院した朝、町は静かでした。代わりにラッパを吹ける者はいません。その日、テツさんの弟子の青年、ユウジが病院に駆けつけました。 「親方、ラッパを貸してください」 ユウジは町に戻り、少し震える音でラッパを吹きました。不格好でしたが、町の人々は喜びました。「豆腐屋さんの音だ」。
退院の日、テツさんは言いました。 「ラッパはな、音色より、毎日鳴ることが大事なんだ。町の朝は、誰かの『おはよう』で始まる。その係を、次はお前がやってくれ」
翌朝から、町の朝は二代目のラッパで始まります。