窓のない病棟に、画家のカズさんがボランティアで来ます。白い壁に、大きな窓の絵を描くのです。窓の外には季節の景色。春は桜並木、夏は入道雲、秋は紅葉、冬は雪の野原。
長期入院の少年は、自分の病室の「窓」が一番好きでした。カズさんは季節が変わるたびに、窓の外の絵を描き変えに来ます。 「次の窓は、何が見たい」 「海。夏の海が見たい」 夏、カズさんは窓いっぱいに海を描きました。少年は毎朝、その海を見て言いました。「今日も、いい天気だ」
退院の日、少年は言いました。 「窓は、外を見るためのものだと思ってた。でも本当は、希望を見るためのものなんだね」
カズさんは頷きました。窓を描く仕事は、今日も続きます。