第82話 蚤の市のおもちゃ

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

蚤の市で売られていたブリキのおもちゃの兵隊は、値札に「訳あり」と書かれていました。片腕が少し曲がっているのです。でも、この兵隊には特技がありました。買ってくれた子どもに、前の持ち主たちの物語を、夢の中で語るのです。

兵隊を買った少年、トモは夢を見ました。戦時中の子どもが兵隊を大事に抱いている姿、引っ越しのたびに連れて行かれた街並み、棚の上で見守った家族の成長。一つのおもちゃが、何十年もの家族の時間を見てきたのです。

「この兵隊は、宝物だね」 トモの母親も頷きました。「おもちゃはね、遊ばれるためだけじゃなく、家族の時間を覚えるためにあるのかもね」

兵隊は今夜も、夢の中で物語を語ります。次は、トモの家族の物語を覚える番です。