第97話 約束のベンチ

やさしい不思議の本 著者:しおりさと

公園の池のほとりに、古いベンチがあります。五十年前に、このベンチで二人の少年が約束をしました。「大人になっても、毎年この日、このベンチで会おう」。二人はその後、別々の街で暮らしましたが、約束の日には必ずベンチに来ました。

年を重ね、互いの髪が白くなっても、約束は続きました。来られない年は、手紙がベンチの近くの郵便受けに届きました。

五十年目の約束の日。先に着いた老人は、ベンチに座って目を閉じました。やがて、杖の音が近づいてきました。 「遅れてすまん」 「いいさ。待つのは慣れている」 二人は並んで座り、池を眺めました。若い頃と同じ、静かな時間でした。

「来年も、ここで」 「ああ。来年も」

約束は、未来への小さな切符です。二人の老人は、また一年分の切符を買ったのでした。