第14話 言えなかった好き

夜の郵便局 著者:ミオ

高校時代の同級生に宛てた手紙だった。書いたのは、今は三十歳になる女性。卒業の日、告白の手紙を鞄に入れて登校したのに、渡せなかった。その後、二人は別々の町で生きてきた。  彼女は今、結婚を控えている。引っ越しの荷造り中、古い鞄から手紙が出てきた。「ああ、こんなもの」と笑いながらも、捨てられなかった。手紙は思い出の品と一緒に箱に入れられ、その夜、局へ流れ着いた。 「これは、届けるべきでしょうか」透は迷った。「今さら、相手の生活を乱しませんか」 「この手紙は、告白ではなく、区切りとして届くのだと思います」星野局長は封筒の重さを量るように持った。「過去の自分を、ちゃんと卒業させるための手紙です」  宛先の男性は、小さな本屋を営んでいた。閉店後の店で一人、手紙を読んだ彼は、しばらく本棚の間を歩き回った。青春というのは、終わった後も、時々こうして店の隅から顔を出すのだと思いながら。手紙を読んだ彼は、懐かしそうに笑い、店の奥の棚から一冊の本を取り出した。高校時代、彼女に貸したままになった本だった。  貸したままになっていた本は、店の奥の棚に、十二年間ずっとあった。彼は時々、その本の埃を払いながら思っていた。返しに来ないということは、彼女のどこかで、あの頃が続いているということなのかもしれない、と。今夜届いた手紙は、その問いに静かに答えた。あの頃は、ちゃんと終わりを迎えようとしているのだと。  彼は本屋の便箋で、短い返事を書いた。「手紙をありがとう。あの頃の君の笑顔を、よく覚えています。幸せになってください。返しそびれた本は、卒業祝いにどうぞ」  返事は局を通って、彼女の結婚式の朝に届いた。彼女は笑って泣いて、それから返事を、高校時代の手紙と並べて小さな箱にしまった。これで、あの頃は本当に卒業になったのだ。支度の途中、婚約者が尋ねた。「嬉しい便り?」彼女は頷いた。「うん。昔の私からの、卒業証書みたいなもの」。彼女は花嫁支度を始めた。