引き裂かれた手紙が、二つに分かれて局に届いた。半分は姉から、もう半分は弟から。けれど、それは別々の手紙の半分同士だった。 姉の手紙は、怒りに任せて書き、途中で破ったもの。弟の手紙は、謝ろうとして、やはり破ったもの。二人の手紙の破片は、夜の風に乗って、局の床で出会ったのだ。 星野局長は、二つの破片を机の上で並べた。 「面白いですね。姉の手紙の後半と、弟の手紙の前半が、まるで対話のようだ」 姉の残り半分には「本当は、心配だった」とあり、弟の半分には「悪かったのは俺の方だ」とあった。破られなかった部分同士が、互いの本音を持ち寄っていた。 星野局長は、破片の裏に薄い和紙を当て、破れ目をそっと補強した。「手紙の形を整えるのは、局の仕事のうちです。破られた手紙ほど、丁寧に扱わなければ」 透は尋ねた。「でも、書き手は破ってしまったんです。それを届けていいんでしょうか」 「破ったのは、書き上げた後です。書かれた言葉には、書かれた理由がある。その理由の方が、ずっと大きいのです」 局長は二つの半分を一つの封筒に入れ、姉と弟、それぞれの家に同じ夜届けることにした。受け取った側は、自分の言葉の続きに、相手の本音を読むことになる。 配達の帰り道、透は言った。「破られた手紙にも、届く力があるんですね」 「言葉はね、半分でも届きます。大事なのは、書かれたという事実です」 その夜、姉は台所で封筒を開けた。自分の破ったはずの言葉の隣に、弟の字があった。「悪かったのは俺の方だ」。姉は笑いながら泣いた。弟もまた、遠くの部屋で、姉の「心配だった」という半分を読んで、長いこと頭を抱えていたという。 二人の間には、まだ話すべきことが山ほどあった。けれど、最初の一歩に必要なのは、山ほどの言葉ではなく、半分の本音だったのだ。 その冬、二人は同じ食卓で年越しそばを食べたという。半分ずつの言葉が、残りの半分を連れてきたのだ。