差出人は、小学生の男の子だった。宛先は「天国のおじいちゃん」。 「おじいちゃん、ほしはそっちからも見えますか。ぼくは夏休みの自由研究で、星のことを調べています。おじいちゃんが教えてくれた北極星、見つけました」 おじいちゃんは星が好きで、生前、男の子と一緒に望遠鏡を覗いた。男の子は手紙を書いて、星空に向けて読み上げ、それを封筒に入れて庭に埋めた。封筒は雨で掘り起こされ、夜の風に乗って局へ来た。 「天国への配達は、局の管轄外のはずですが」透が言うと、星野局長は帳面をめくった。 「大丈夫。星空宛は、裏の丘が中継所です」 透は丘の上に手紙を届けた。といっても、置いたのは古い天文台の郵便受け。廃墟に見えたその建物は、今は地域の天文同好会が使っているという。 天文台の郵便受けを開けたのは、同好会の最年長の会員だった。彼は手紙の字を見て、すぐに分かった。何十年も前、同じ天文台で一緒に星を見た仲間の、孫の字だということを。故人の友人の字に、どこか似ていたのだ。 「星はね、人と人を、時間の向こう側でも繋ぐんですよ」星野局長は、後日その話を聞いて言った。「郵便の仕事と、少し似ています」 数日後、男の子のもとに同好会から便りが届いた。「手紙、見つけました。よかったら、観望会に来ませんか。あなたの席を用意します」 観望会の夜、最年長の会員は男の子に望遠鏡を覗かせた。「この望遠鏡はね、君のおじいちゃんが若い頃、レンズを磨いていたものだよ」。男の子は驚いて、それから嬉しそうにレンズに触れた。星の光は、何十年も旅をして地球に届く。おじいちゃんの若い日の光も、今夜の星空のどこかに混じっているのかもしれなかった。 観望会の夜、男の子は北極星を見ながら言った。「おじいちゃん、見えたよ」 同好会の人々は、それから毎年、夏の観望会に彼を誘うようになった。星の手紙は、一度届けば、ずっと続くのだ。 空からの返事は、星の瞬きだったのかもしれない。透は配達簿に、静かに印を付けた。